第1章
鏡に映るシンプルなシャンパンカラーのドレスを整える。手のひらが少し湿っていた。クローゼットの中で一番良いドレスなのに、これから向かうIT企業の懇親会パーティーという背景の中では、ひどく……平凡に見える。
「本当にこれで大丈夫かな?」スカートのしわを伸ばしながら、声の緊張した震えを隠せずに呟いた。「私、浮いちゃったりしない?」
涼介が私の後ろに歩み寄ってきた。その手には、繊細な青いジュエリーボックスが握られている。彼の姿を見て、私の心は瞬時に落ち着いた。この人こそ、私が丸三年、愛してきた男性なのだ。
私たちが再会したのは、三年前の桜丘大学のキャンパスだった。幼馴染だった二人が、離れ離れになり、大人になって再会する――まるでおとぎ話のようだった。彼は昔のまま、私が緊張していると優しく背中を撫でてくれる少年で、私は今でも、彼の笑顔ひとつで頬を染めてしまう少女のままだった。
「心配ないよ、香織。君はいつでも、この場所で一番綺麗だ」彼の眼差しは、いつだって優しかった。
彼が箱を開けたとき、私は思わず息をのんだ。シルクの内張りに鎮座していたのは、一粒一粒がきらびやかに輝くダイヤモンドのネックレスだった。
「涼介、こんな高価なもの、受け取れないよ――」
「僕の姫様には、どんなものでも釣り合わないくらいだよ」彼はそう言って、丁寧に私の首にネックレスを留めてくれた。指先がうなじを掠め、背筋にぞくりと震えが走る。
ダイヤモンドが肌に触れる感触はひんやりとしていて、その重みには馴染みがなかった。でも、それ以上に私を不安にさせたのは、涼介の瞳だった――ネックレスを留める彼が向ける視線の中には、複雑で、読み解くことのできない感情がちらついていた。
その表情には、見覚えがあった。
「今夜は、特別な夜になるよ」と彼が言ったとき。一ヶ月前に、彼が謎めいた電話に出たとき。そして……すべてを変えてしまった、一年前のあの午後。
彼のアパートで映画を観ながら丸くなっていたとき、ドアベルが鳴った。涼介の体は、途端に硬直した。
「香織、早く、寝室に行って」彼の声はあまりに張り詰めていて、私まで緊張してしまった。
「どうして隠れなきゃいけないの?」私は混乱して尋ねた。
「親父かもしれない」彼はすでにドアに向かっていた。「お願いだ、香織」
あんなに狼狽した彼を見たのは初めてで、私は言われるまま寝室に隠れた。ドアの隙間から覗くと、彼の父親が入ってくるところだった――背が高く、威圧的な男性で、その存在感で部屋の空気が重くなった。
二人の声は低かったけれど、私の心を凍らせるような言葉の断片が耳に届いた。
「……あんな素性の娘を……」
「……家の恥になるようなことは……」
涼介の声は、苦しそうだった。「父さん、俺は彼女を愛してるんです」
「愛?」父親の声は氷のように冷たかった。「お前の母親がどうやって死んだか忘れたのか?」
その夜、涼介は実家に呼び出された。戻ってきた彼の目には、複雑な何かの影が宿っていた。
「涼介?」私の声が、彼を思考の海から引き戻した。
「ん?」彼の目に一瞬パニックがよぎったが、すぐにいつもの優しさが戻ってきた。
「愛してるって言ったの。この三年間は、私の人生で最高の日々だった」私は彼の顔を両手で包み、目に涙を浮かべた。「ずっと秘密にしなきゃいけなかったことも、あなたの家族のことも、わかってる。でも、愛し合っていれば、きっとすべてうまくいくって信じてる」
父親が訪ねてきてから、涼介は変わった。温かさとよそよそしさの間を行き来し、時々、私には解読できない表情で私を見つめた。私を抱きしめているのに、何キロも離れているように感じることさえあった。
でも、それはただプレッシャーのせいなのだと自分に言い聞かせた。私がもっと相応しい人間になれれば、彼に値すると証明できれば、きっとすべてうまくいくはずだと。
「今夜は、特別な夜になるよ」彼の青い瞳の中で何かがきらめき、声が少し掠れた。
私の心臓が速まった。もしかして……もしかして今夜、彼はついに私たちのことを公表してくれるのかもしれない。今夜、私たちは隠れるのをやめるのかもしれない。
「それって……?」希望を打ち砕くのが怖くて、最後まで言葉にできなかった。
涼介は答えず、ただ私の額に軽いキスを落とした。それは優しかったけれど、奇妙で、説明のつかない悲しみを帯びていた。
彼は、私にとても良くしてくれた。すべてにもかかわらず、彼は私を選んでくれた。私はきっと、世界で一番幸運な女なのだ。
高級ホテルのボールルームは、クリスタルのシャンデリアの輝きに温められ、眩いほどだった。私は涼介の腕にしっかりとつかまり、緊張と興奮を感じていた。
これが、二人で初めて参加する正式なパーティーだった。三年間、私たちの関係は秘密で、プライベートな空間だけのものだった。今夜、それが変わるかもしれない。
周りの女性たちはきらびやかで、彼女たちの宝石は私が今まで見たどんな芸術品よりも精巧だった。その話し方も、グラスの持ち方も、笑顔さえも――すべてが、私が決して持ち得なかった気品を物語っていた。
彼女たちは、この世界に生まれてきた人たち。そして私は……。
だが、ネックレスをくれたときの涼介の優しい眼差しを思い出すと、心が落ち着いた。彼は彼女たちではなく、私を選んでくれたのだ。
「あら、涼介じゃない!」シャネルのスーツに身を包んだ女性が近づいてきた。完璧なメイクで、その笑みはあからさまに品定めするようだった。「そして、こちらはあなたの……お友達?」
彼女は「お友達」という言葉をことさらに引き延ばし、私を瞬時に不安にさせた。
「こちらにお招きいただき光栄ですわ」私は自信があるように聞こえるよう努めて言った。
「面白いわね」別の女性が口を挟み、私を値踏みするように見つめた。「てっきり涼介の同伴者は……もっと違うタイプかと思ってた」
私は涼介に視線を送った。私を彼のものだと主張して、私たちの関係を定義してほしくて。しかし彼はただ淡く微笑むだけで、何も言わなかった。
奇妙なことに、ある記憶が蘇った。一ヶ月前、涼介がバルコニーで電話に出ていた時のことだ。彼が「いや、彼女はいないよ」と言っているのが聞こえてしまったのだ。
その時は仕事の話だろうと気にも留めなかった。でも、今となっては……。
いや、と私は首を振った。彼はまだ準備ができていないだけかもしれない。家族からのプレッシャーは計り知れない。私が理解してあげなくちゃ。
もっと自信に満ちた自分に見せたくて、化粧直しのために化粧室へ向かった。その帰り道、人目につかないラウンジエリアを通りかかると、聞き覚えのある声がした。
涼介が、友人たちと話している。
「私の話をしてるのかな?」私の気分は一瞬で高揚した。「きっと私のことを紹介してるんだ。今夜こそが、本当にその夜なのかも」
彼が私のことをどう説明するのか聞きたくて、私は歩みを緩めた。
「正直、お前は麗華を連れてくると思ってたぜ」と、ある声が言った。
麗華……桜丘大学の有名人だ。写真を見たことがある。とんでもない美人だった。
「麗華?」涼介の声はそっけなかった。「あいつは退屈だからな。でも香織は……」
私は息を止めた。彼は何て言うのだろう?彼の秘密の恋人?三年間愛し続けた女性?
「香織?」涼介は突然笑った。その声に、胸が締め付けられた。「あいつはただの遊び相手だよ。母親譲りでな――金持ちの男を『捕まえる』手管は全部教わってる」
何?
世界が傾いた。遊び相手?そんなはずない……私のことであるはずがない……私たちは愛し合っていた。きっと聞き間違えたのだ。
「はは、お前ひでえな!」誰かが笑った。「でもマジな話、あいつ本当にお前と付き合ってると思ってるぜ。あの希望に満ちた顔見たか?純真だよな」
「誰が付き合ってるって言った?」涼介の声は氷のように冷たかった。「あいつが勝手に想像してるだけだ。俺は一度も関係を認めたことなんてない」
嘘……嘘よ……ありえない……三年間もの優しさ、共に過ごした三年間、深いキス、夜通しの語らい……。
「お前も役者だな」と別の声が言った。「本気で愛されてるって思わせたんだから。そりゃあんなに献身的にもなるわな」
「母親の芸術家としての成功?」涼介の声は続いた。一言一言が、私の胸を刺すナイフのようだった。「全部、うちの親父が『スポンサー』になってやったんだ。あんな女から、あんな娘から、何を期待するんだ?」
「じゃあこの三年間、お前はずっとあいつを弄んでただけなのか?」
「もちろんだ」涼介の笑い声は、残酷で、勝ち誇っていた。「母親が当時支払うべきだった代償を、娘に払わせてるだけだ」
皆が笑っていた――嘲笑、毒々しい笑い声。
震えながら、私は影から一歩踏み出した。「涼介……何を言ってるの?」
会話が途絶えた。皆が一斉に私に振り向いた。その顔には気まずさなどなく、ただ覗き見趣味の興奮だけが浮かんでいた。何人かは、さりげなく携帯電話を持ち上げ、カメラをこちらに向けてさえいた。
涼介がゆっくりと振り返った。かつて温かかった青い瞳は、今や恐ろしいほどに冷え切っていた。「ああ、香織。ちょうどいいタイミングだ」
「この三年間……あなたが言ってくれたこと……あの夜の数々……」私の声は震え、涙で視界がぼやけた。
「何のことだ?どの夜のことだ?」彼の笑みは残酷で、皮肉に満ちていた。「俺がいつ、お前を愛してるなんて言った?ずっと自分で思い込んでただけだろ?」
「嘘……ありえない……」私は泣きながら首を振った。「あなたは私を愛してた!私のことを姫様だって言った!ずっと一緒にいるって言ったじゃない!」
「姫様?」涼介の友人たちが、携帯を向けたまま、さらに大きな笑い声を上げた。「涼介、お前、このネックレスが先月麗華にあげたやつだって言ってなかったか?あいつに返品されたってやつ」
私の世界は、完全に砕け散った。
顔から血の気が引いた。首にかかったダイヤモンドのネックレスが、急に耐え難いほど重く感じられ、まるで私を締めつけているかのようだった。
「どうして……」私は立っているのがやっとだった。「三年間……丸三年間も……涼介、これが嘘だって言って……」
涼介は一歩近づいた。その表情は、獲物を見つめる猫のようで、私の心を押し潰した。「画家の娘が、鷹見家の跡取りに相応しいとでも思ったのか?」
彼の声はさらに低く、それでいて苛烈になった。「お前の母親がどうやって展覧会の機会を得たか、知ってるか?とぼけるなよ。お前も、母親と同じくらい……簡単に手に入るか試したかっただけだ」
「いや……いや!いやぁっ!」私は叫んだ。声はかすれていた。「三年間!三年間もあなたを愛してた!あなたも私を愛してた!愛してるって言ったじゃない!」
しかし涼介はすでに背を向け、私に最後の言葉だけを残していった。「一度も」
涼介の笑い声と群衆のざわめきが、悪魔の囁きのように私の背後で響き渡った。
涙で視界が滲んでも、嘲笑はさらに大きくなるばかりだった。走り去りたい、隠れたい、でも足が動こうとしなかった。
ようやく、私はよろめきながらボールルームを抜け出し、外の嵐の中へと飛び出した。雨が涙と混じり合う中、私はついに理解した。過去三年の幸せは、すべてが精巧に作り上げられた嘘だったのだと。
そして私は、その中で最も愚かな獲物だったのだ。







