第21章 これが唐沢楓?

ホテルの階段で、網島新の姿は実に惨めだった。

八階まで上がった時点で、すでに息が切れていた。足は震え、まるで鉛を詰められたように重かった。

一方の水原悟は、ずっと楽そうに見えた。

振り返った水原は眉をひそめ、網島に言った。

「早くしろ。ぐずぐずするな。まだ階段は続くぞ」

網島は荒い息を吐きながら言った。

「社長、もう無理です。なんでこんなに階段が長いんですか」

水原は余裕の表情で答えた。

「これくらい大したことない。俺はPKO部隊にいた時期があってな。あの訓練の方が遥かにきつかったぞ。この程度なら、あと二十階でも平気だ」

ようやく、二人は四十階に到着した。

網島は階段に腰...

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