第44章

「くそっ!このクソ男、恥知らずにもほどがあるでしょ?!」

傍で盗み聞きしていた唐沢楓は、もどかしさに足を踏み鳴らした。

あいつときたら、「おじいさん」を盾に自分の弱みを握ろうとしている。

唐沢楓は急いで「お兄さん」に目配せした。

唐沢佑は妹を一瞥すると、諦めたように携帯を彼女に渡した。

「水原悟、おじいさんを持ち出せば私を操れると思わないでよ!」

水原悟は冷淡な口調で返した。

「好きにしろ。白石さゆりが行きたくないなら無理強いはしない。だが、おじいさんに俺たちが離婚したことを知らせても文句言うなよ。おじいさんが喜ぶわけないだろ」

「脅すつもり?」唐沢楓は歯ぎしりして怒りを露わ...

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