第46章

しかし、礼儀として唐沢楓は電話に出ることにした。

唐沢楓が声を発する前に、電話が繋がると堀内陽介の穏やかな声が聞こえてきた。

「さっき江南会館に行ったんだけど、オーナーが変わったって言われたよ。君の展覧会はどうなった?新しいオーナーと契約は済んだ?」

契約の話が出た途端、唐沢楓は胸が苦しくなった。

「ううん、新しいオーナーとの交渉は決裂したわ。今、新しい会場を探してるところ」

でも新しい会場なんてそう簡単に見つかるものではない。会場の予約は通常一ヶ月以上前からするものだ。展覧会を目前に控え、唐沢楓はほとんど絶望的な気持ちになっていた。

電話の向こうの沈黙を感じ取り、堀内陽介は少し...

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