第192章

遠くから、いくつかの人影も同時に消え去った。

廊下は再び静寂に包まれた。

病室の中も同様だった。

天宮拓海は数言葉を交わした後、大人しく口を閉ざし、静かに星谷由弥子の傍らを守っていた。

窓は明るく清潔で、月は明るく星は疎らだった。

天宮和人が警察署から出てきたとき、夜の帳はすでに降りていた。

「おめでとうございます、天宮社長。無事に出てこられて」

上原健介は口元に笑みを浮かべながら、ベントレーに寄りかかっていた。いつもの厳格な様子とは打って変わり、言葉にも冗談めいた調子が混じっていた。天宮和人を見る視線には、からかいの色が濃厚に表れていた。

木下浩介は黙って天宮和人に真新しい...

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