第38章

シンプルな一言が、星谷由弥子の去りゆく姿を確実に止めた。

星谷由弥子が振り向き、冷たい目で星谷邦男の険悪な視線と対峙する。

星谷家は医薬品業で成功を収め、ある程度の資本を得た後、好機を捉えて複数の私立病院に資金を投入した。

認めざるを得ないが、当時の星谷家の人々は確かに先見の明と洞察力を持ち合わせていた。

私立病院を確立するため、専門家を高給で招き、優秀な医師を育成し、最高の医療機器を購入し、最良の薬を使用するという一連の取り組みにより、星谷家は帝都で確固たる地位を築いた。

星谷邦男はビジネスセンスが皆無でも、家族が築き上げた資産の恩恵を受け、業界で一定の地位を保持できていた。

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