第43章

中年男性は星谷由弥子の反応に急いた様子で、すぐに口を開いた。「由弥子さん、五年前に万田さんと一緒に海町の八幡通りに来られたことを覚えていますか?」

星谷由弥子が頷くのを見て、男性は続けた。「あの時、私どもがお二人をお招きしたんです。おかげさまで価値のある骨董の花瓶を購入することができました」

骨董の花瓶という言葉に、星谷由弥子の記憶が一気に蘇った。

過去の出来事が映画のように、彼女の脳裏に流れていく。

星谷由弥子はすぐに記憶の中の青年と目の前の人物を重ね合わせ、小声で尋ねた。「若部社長でしょうか?」

「そうです、そうです、私です」若部社長はすぐに答えた。「まあ、由弥子さん、本当に探...

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