第55章

病院のすべての階は明かりに包まれていた。天宮和人は木下浩介を連れ、灯りに導かれるように星谷由弥子の病室へと向かっていた。

半開きのドアから風が漏れ出し、天宮和人は眉をひそめ、ドアノブに手をかけて中へ押し開けた。

「星谷由弥子!」

二歩ほど後ろにいた木下浩介は天宮和人の叫び声を聞いただけで、次の瞬間には彼が弓から放たれた矢のように病室へ飛び込むのを目にした。

木下浩介が状況を把握できないうちに、天宮和人はすでに前方へ身を躍らせていた。

星谷清美は手に光るナイフを握り、まさに星谷由弥子の手の甲に突き刺そうとした瞬間、ドアから大きな音が響いた。

悪事を働いていた星谷清美は慌てて顔を上げ...

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