第57章

「嘘です、奥さんは嘘をついています。信じられません!」

心理医は二人の会話を遮り、再び前に出た。

「この手稿の筆跡は、神医が寄贈した医学書の筆跡とまったく同じです。そしてその医学書の年代は、おそらく奥さんより古いものでしょう。奥さんがこの手稿を書くことなど絶対にあり得ません」

さっきは彼も混乱していたのだ。天宮若奥様の言葉に惑わされてしまったのだ。

「それにこの手稿がオークションに出されるという情報が広まったのはつい最近のことです。奥さんがこれを書いたというなら、失礼ながら伺いますが、いつこの手稿を完成させたのですか?」

心理医の質問は、その場にいる他の二人の男性も疑問に思っていた...

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