第59章

「いや、最近帝都で銀行強盗のニュースなんて聞いてないぞ!」

二人の警官が、一言ずつ交わしながら、別荘の門前に立ち尽くし、踏み出せずにいた。

二人とも、金持ちと接触するのはあまり気が進まなかった。多くの金持ちは自分の財力を盾に警官たちを見下すからだ。

たとえ合法的に調査のために金持ちを訪ねても、皮肉を言われたり、ひどい場合は上層部に訴えられたりする。会社のイメージを損ない、莫大な利益損失を招いたと言いがかりをつけられ、最終的には現場の警官が始末書を書かされ、ボーナスまで減らされる。

こうした一連の経験から、警官たちは本能的に避けたいと思っていた。

「近藤警部、星谷由弥子さんの電話はや...

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