第68章

拓海がトイレに行きたいというのは口実に過ぎなかった。大人たちの視界から離れるやいなや、天宮拓海は星谷由弥子に甘えるように笑いかけた。「ママ、あのおじさんたちにウソついたんだよ」

「すごいわね」星谷由弥子は拓海の鼻をつまんで、「ママを助けてくれてありがとう、拓海」

星谷由弥子にほめられて、拓海はまるで勝ち誇った将軍のように、彼女の手を引いてレストランから堂々と歩き出した。

午前中ずっと遊んでいたが、星谷由弥子は本来の目的も忘れてはいなかった。彼女は直接車で拓海を見つけギャラリーへと連れて行った。

疲れたのか、拓海は星谷由弥子の小さなお守りのようになり、黙ったまま泣きもせず、ただ彼女にぴ...

ログインして続きを読む