第29章

佐藤直樹はまだ松本絵里の身分を把握していなかった。「松本さん、あなたは宇宙の方ですか?」

松本絵里は微笑んだ。「佐藤さんはそのうち分かりますよ」

松本絵里はカフェを後にした。

一方、坂田和也は装いを変えていた。大きめのコート、キャップにサングラス、マスクと完全に姿を隠し、一人で外出していた。誰にも気づかれたくなかったのだ。

カフェの前を通りかかった時、中から誰かがドアを押し開けるのに気づかず、ドアが彼に当たった。松本絵里は片足がドアに引っかかり、バランスを崩した。

坂田和也は素早く彼女を支えた。

二人は目も合わせなかったが、松本絵里が坂田和也の胸に近づいた瞬間、ある種の震えを感じ...

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