第31章

松本絵里の目に冷たい光が走った。その決意に満ちた表情は、彼女の最も近くにいる北村裕也にだけ察知できるものだった。

北村裕也は特に驚かなかった。松本絵里の温和で従順な外見の下には、一種の殺伐とした気配が隠されていることを知っていたからだ。

結局のところ、あんな場所で五年も過ごして出てきた人間が、無垢な存在であるはずがない。

むしろ、こんなにも優しく穏やかに振る舞えることこそが、最も不思議なことではないだろうか。

松本絵里は再び招待状を手に取り、眉をひそめた。「確か坂田光はまだ取締役会のメンバーではなかったはず。今回のパーティーがJ市で開催されるなんて」

吉田拓海が松本絵里に説明した。...

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