第117章

運命とは、とかく人を翻弄したがるものらしい。悩み事を抱えながら足早に通路を曲がったその時、私は何の予兆もなく、不意に山本伊織と正面衝突してしまった。

視線が絡み合う。山本伊織はそこに立ち尽くしていた。その瞳には涙が溢れ、驚きと狼狽、そして言葉にし難い感情が渦巻いている。荒野で迷い込んだ子供のように、孤独で無力な顔つきだった。ぶつかった相手が私だと気づくと、彼女の口元が微かに震えた。何かを言おうとして、けれどその言葉は喉元でつかえ、声になることはない。直後、彼女は慌てふためいて踵を返し、逃げ出そうとした。

あまりの狼狽ぶりに、胸の中に強烈な不安が込み上げてくる。私はほとんど無意識のう...

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