第139章

必死の思いで車を運転し、マンションに辿り着いた。疲労困憊で頭はガンガンするし、何より正体の知れない不安がつきまとう。まるで、見えない何者かが暗闇からじっと私を覗き見ているような……。重い足取りを引きずって部屋の前まで行き、ドアを開けた瞬間――目に飛び込んできたのは、山本翔一の姿だった。懐かしくも、今は他人行儀に感じるその姿がソファに鎮座しているのを見て、私は思わず身震いした。冷や汗が背中を伝う。だが、驚きは一瞬のこと。私はすぐさま警戒心を露わにし、神経を張り詰めた。

相変わらずだ。仕立ての良さそうな黒いスーツに身を包んでいるが、その上質な生地からは、彼自身と同じ冷徹な空気が漂っている。白い...

ログインして続きを読む