第231章

翌朝、まどろみの中で不意にスマートフォンの着信音が鳴り響いた。画面には平沢雪乃の名前が表示されている。

「もしもし?」

私は寝ぼけ眼のまま応答した。

電話の向こうで、平沢雪乃の声には迷いと葛藤が滲んでいた。

「静香、あのね……ちょっとお願いがあるの。悪いんだけど、数日だけでいいから東英法律事務所の留守を頼めないかな?」

その言葉に眠気が吹き飛び、胸の奥に一抹の不安がよぎる。

「どうしたの? 何かあった?」

平沢雪乃は気まずそうに軽く咳払いをしてから答えた。

「実はたいした事じゃないんだけど、数日ほどS市を離れなきゃいけなくて。だからあなたに頼りたくて」

私は少しの間沈黙した...

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