第82章

山本翔一の車がバーの入り口に横付けされると、瞬く間に衆目を集めた。ガレージにある車の中で最も高価なわけではないが、高級車であることに変わりはない。人々は皆、どんな幸運な女がこの車にエスコートされるのかと、噂し合っているようだ。

私は手を振り、車の方へと歩き出した。足元がおぼつかないのを見て取った運転手が、慌てて降りてきて私を支える。平沢雪乃も心配そうに二、三歩ついてきたが、私が手を振って制すると、そこで足を止めた。

私は振り返って平沢雪乃に言った。

「安心して、平気だから。旦那様と一緒に帰るわ」

平沢雪乃は複雑な表情を浮かべている。今の彼女にどう説明すれば伝わるだろうか。私がもう山本...

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