第10章 私は彼のママではない

病院の外科病室。

水原茜は一人で病室にいて、付き添いもなく、静かだった。

お腹が空いてきて、スマートフォンを取り出し、出前を頼もうとした時。

突然、甘くて可愛らしい声が部屋の入り口から聞こえた。「ママ!」

水原茜が顔を上げると、空が小さな足で彼女の方へ走ってきていた。

思わず、ベッドから飛び降りて迎えようとした水原茜だったが、足が不自由なことを思い出し、広げかけた両腕が宙でぎこちなく止まった。

そんな彼女の様子を見た空は、嬉しそうに駆け寄り、ちょうど広げられた腕の中に飛び込んできた。

柔らかな小さな体が水原茜に抱きついた。

小さな顔を上げて「ママも空のこと考えてたの?空はママ...

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