第27章 本人が現れる

最も腹を立てたのは、太田久美子だった。彼女は興奮して、水原暖の手を掴んだ。

「どういうことよ! あんな身分の女が、入れるはずないって言ったじゃない!」

久美子の声には、隠しきれない怒りが滲んでいた。会場中の視線は、今や完全に水原茜に集中し、太田家の令嬢である彼女の存在など、すっかり忘れ去られている。

「私は……」

暖は言葉に詰まった。星河グループが、藤原家から招待を受けるはずがない。父が、彼女を連れてくるはずもない。

「きっと、潜り込んできたのよ」

暖は、自信なさげに小声で言った。久美子は、それを真に受けた。

二人が詰め寄ろうとした時、太田文一が、すでに茜の前に立ちはだかってい...

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