第28章 もしかしてバカじゃないか

スタッフの態度は百八十度変わり、深々と頭を下げた。

一番、顔色が悪かったのは太田文一だった。先ほど、水原茜のために、さりげなく助け舟を出すこともできたはずだ。しかし、彼は傍観するだけでなく、追い打ちをかけるような言葉まで投げかけた。

茜は、そんな彼らを追及することもなく、すぐに会場の片隅へと移動した。水原暖と太田久美子の前を通り過ぎる時、彼女は一瞬、足を止めた。

何も言わなかったが、その眼差しに宿る軽蔑は、背筋が凍るほど冷たいものだった。

「ちっ!」

そんな舌打ちを聞いて、久美子は我慢できなかった。だが、これだけの人々がいる中で、感情を爆発させるわけにもいかない。

その優美な姿が...

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