第29章 梅山の真の姿を知らない

デザートを選んでいる二人を見て、水原暖は太田久美子の手を引き、ずかずかと近づいていった。

あの忌々しい太田文一からようやく逃れられたと思ったら、今度はこの厄介な二人組か。水原茜は、眉間に深い皺を寄せた。

「そんなに大声を出すものではないわ。お父様から、こういうパーティーでは、決して失礼のないようにと、きつく言われているでしょう」

茜の言葉に、暖は顔を曇らせたが、納得できない様子だった。

久美子に、年長者ぶって諭される筋合いはない。彼女は、悔しさのあまり、奥歯をきりりと噛み締めた。

ちょうど彼女が、堪忍袋の緒を切らしそうになった、その時。遠くから、木村知礼が近づいてくるのが見えた。

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