第3章 巨変に遭遇

水原昇栄は彼女の無関心な態度を見て、突然立ち上がり、彼女の背中に向かって怒鳴り始めた。

「いい大学に入ったからって、調子に乗るんじゃないよ!結局は生活費も学費も俺に頼むんだろう?何様のつもりだ?その生意気な面は誰に見せてるんだ?あんたの死んだ母親そっくりだ!」

花瓶が空から落ちてきた。

「ガシャン」という音と共に、水原昇栄の目の前で砕け散った。

彼は驚いて一歩後ずさり、また罵り続けた。

それに応えたのは、二階からの激しいドアの閉まる音だった。

水原茜はドアを閉め、洗面も面倒くさくなり、そのままベッドに倒れ込んで布団を被った。

......

大学に入学してから、水原茜は毎日やたらと疲れを感じていた。

食欲が増し、特に眠くなりやすかった。

ようやく学校が冬休みになり、帰省する前に病院で検査を受けることにした。

検査結果は彼女を雷に打たれたように驚かせた。

医師は彼女に、妊娠五ヶ月だと告げた。

検査結果を握りしめながら、信じられない思いでいた。

でも、信じるしかなかった。

きっと夏休みの、薬を盛られたあの夜だ。

彼女とあの男との、混乱の一夜がもたらした結果。

途方に暮れ、医師に対処法を尋ねた。

医師は彼女の若さを見て、まだ学生かと尋ねた。

大学一年生の彼女には、妊娠して出産などできるはずがなかった。

そうすれば、学業は台無しになってしまう。

医師に堕胎を懇願した。

医師は残念そうに、子宮壁が特に薄いため、無理な中絶は危険だと告げた。

そして恐らく、今後子供を持つことは難しいだろうと。

彼女は最終的に、休学して出産することを決意した。

しかし学校に戻り、休学手続きをしようとした時、未婚での妊娠がネット上に暴露されていることを知らされた。

さらに問題なのは、子供の父親が不明だということだった。

ネット上では、水原茜の乱れた私生活が噂されていた。高校生で妊娠し、安易に堕胎したとか、多くの男性と関係を持ち、お腹の子供の父親すら分からないとか、表面は冷静そうに見えて、実は男性関係が派手だとか...

全て彼女を非難する言葉ばかりだった。

学校は在校生の評判を考慮して、彼女に退学を勧告した。

彼女のような学生の存在は、学校の汚点となるからだ。

そうして、学校は彼女を除籍した。

彼女はぼんやりとした状態で学校を去った。

ようやく出産予定日を迎えた。

陣痛室で生死の境をさまよい、やっと赤ちゃんを産み落とした時。

助産師は、道中時間を取られすぎたため、胎児が子宮内で酸素不足となり、生まれた時には既に心肺停止していたと告げた。

水原茜は産褥で力尽き、その言葉を聞いて気を失った。

水原昇栄はそれを聞くと、彼女が出産直後で体力が弱っているかどうかも考えず、すぐに手続きを済ませ、彼女を海外に追いやった。それ以降、彼女の生死にも関心を示さなかった。

まるで彼女が自分の娘では決してなかったかのように。

その時、水原茜は海外で一人きり、身体的にも精神的にも大きな苦痛に耐えていた。

体調が少し良くなると、すぐにアルバイトを始めて自活した。

そしてある日、太田文一という若い男性と出会った。

七年後。

北町の最高級ホテル。

更衣室にて。

ウェディングドレス姿の水原茜は、メイクも完璧だった。

大きな姿見の前に立ち、スカートを持ち上げ、細いヒールの靴で軽く一回転した。

鏡の中の人は、スタイルが良く、目鼻立ちが整い、眼差しは艶やかで、愛らしい笑みを浮かべていた。

その笑顔は、心からのものだった。

彼女のような世間から蔑まれた人間でも、幸せを掴むことができる。

今日は太田文一との婚約式の日だった。

20歳の時の出来事で、水原家から追い出され、学校も退学させられ、名誉を失った。

人々は彼女を淫らな女と罵り、冷たい目を向けた。

でも太田文一は違った。三年間、ずっと水原茜の側にいて、彼女を見捨てなかった。

最も重要なのは、彼が彼女の過去を理解し、同情し、愛してくれることだった。

水原茜は笑顔を浮かべ、未来への期待に胸を膨らませた。

鏡の前で髪を整え、少しあごを上げ、ドレスを持って入り口へ向かった。

突然の煙の匂いに、思わず口を押さえて咳き込んだ。

目も刺激されて、涙が出そうになった。

白いレース手袋をした手でそっとドアを開けると、突然濃い煙に包まれた。

驚いて二歩後ずさりした。

どうしたんだろう?火事?

さっきまで何も問題なかったのに。

水原茜は迷わず、長いドレスの裾を持ち上げて前で結んだ。

テーブルの上にメイクアップアーティストが飲みかけたミネラルウォーターがあったので、手に取り、手袋を濡らし、素早く鼻を押さえて更衣室を飛び出した。

先ほどまで宴会場で賑わっていた場所は、今や煙が充満し、散乱していた。

ホールにはほとんど人影がなかった。

火の勢いは突然ではなかったはずだ。

客は全員無事に避難できたようで、安堵した。

しかし、なぜ誰も彼女に火事を知らせに来なかったのだろう。

彼女の婚約者で、この祝宴の主役である太田文一は、どこへ行ったのだろう。

壁際やホールの柱の方向で燃え盛る炎は、血に飢えた怪物の口のように、全てを飲み込もうとしていた。その中には、その場に立ち尽くし途方に暮れる水原茜も含まれていた。

もう躊躇している場合ではなかった。記憶の中の出口に向かって必死に走り出した。

巨大な恐怖が彼女を襲った。

心の中に深い絶望が湧き上がり、全身が震えていた。

足取りはよろめき、前に進むのも困難だった。

周りには肌を焼くような熱波。目の前の濃い煙で、数メートル先も見えなかった。

窒息しそうになった時、彼女は聞き覚えのある声を聞いた。

その声は叫んでいた。「誰かいませんか?」

婚約者の太田文一が、危険も顧みず駆け込んできたのだ。

その瞬間、彼女は英雄が天から降り立ったかのように感じた。

息を詰まらせる煙にも構わず、その声がする方向に向かって必死に叫んだ。「文一、私はここ...ゴホッ、ゴホッ...」

濃い煙が彼女を飲み込み、もう声を出すことができなかった。

彼女は太田文一が、まるで彼女の声も姿も見えないかのように、焦った表情で辺りを探し回るのを、ただ見つめることしかできなかった。

そして彼は何かを見つけたかのように、すぐに別の方向へ走っていった。

水原茜はただ呆然と、太田文一が別の女性を抱きかかえ、火の海を突っ切って急いで外へ向かうのを見ていた。

彼女をそこに置き去りにしたまま。

濃煙の中、水原茜は、その女性の声をはっきりと聞いた。極度に弱々しく、柔らかくて切ない声で、彼女はこう言った。「文一お兄さん、きっと助けに来てくれると思ってました...さっきはすごく怖かったの、もう二度と会えないかと...」

太田文一は彼女を抱きながら外へ走り、優しく慰めた。「大丈夫だよ、怖がらなくていい。何があっても、絶対に見捨てたりしないから!」

その瞬間、水原茜は頭を殴られたかのように、立っていられなくなり、目の前が暗くなり、胸が鈍く痛んだ。

なんと、それは義妹の水原暖だった。

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