第35章 私は本当に急いでいない

彼は悪意を持って直接水原茜に写真を送り付けた。自分が気分を害しているなら、水原茜も同じように苦しむべきだと思ったのだ。

しかし水原茜からの返信を受け取った瞬間、彼の表情は一層険しくなり、思わず携帯電話を床に叩きつけたい衝動に駆られた。長い時間かけて気持ちを落ち着かせ、やっと長文の罵倒と皮肉を打ち込んで送信したが、なんと「送信失敗」の表示が出た。

これで完全に堪忍袋の緒が切れ、怒りに任せて携帯を壁に投げつけた。「バン」という音が響く。水原茜って奴、どうしてブロックなどするのか。ちょうどその時、父親が階段を降りてきた。

「文一」

父親の声を聞き、太田文一はようやく感情を抑えた。

「昨夜...

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