第9章 ビンタは人を教育するためにある

 会社で陸川翔に屈辱を味わわされた後も、北川彰人は懲りるどころか暴走を加速させた。

 懐柔が無理なら、実力行使に出るつもりらしい。

 退社途中、私の車が赤いポルシェに強引に幅寄せされ、停止させられた。場所は渋谷区。ネオンが瞬き、人々が行き交う路上だ。

 車から降りてきたのは水原真央だった。手には正体不明の液体が入ったボトルを持ち、形相は鬼のように歪んでいる。

「桜井! この泥棒猫! あんたが陸川に帳簿を調べさせたんでしょう? あんたのせいで私の人生はめちゃくちゃよ!」

 彼女は駆け寄り、ボトルの蓋を開けて中身をぶちまけようとした。

 警戒していた私は素早く身を翻して避けた。液体は...

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