第146章 何とも言えない吐き気

霧雨真音は顔を真っ赤にして彼の手を押し返した。守谷誠は早川夏のことを思い浮かべる。霧雨真音がいなくなれば、自分は堂々と早川夏と一緒になれる。離婚という汚名を着せられることもなく、霧雨真音の死を利用して早川夏の前で同情を買うこともできる、と。

だから、彼は霧雨真音の首を締め上げ、ベランダから突き落としたのだ。

天樹夢子が脳内で当時の場面を描いていると、傍らで突然少年が彼女を呼んだ。「お姉さん、三〇二号室の事件を調べてるの?」

天樹夢子は我に返り、見下ろすと、八、九歳くらいのマスクをつけた少年が大きな目を開き、真剣な顔で彼女を見ていた。

天樹夢子は少年の前にしゃがみ込み、そっと彼の髪を撫...

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