第157章 抱かせて

天樹夢子の言葉に、陸川北斗の顔はさらに険しくなった。

しかし、彼女の方から先に挨拶してきたのだ。無視すれば自分が器の小さい男だと思われるだろう。彼はのっそりと立ち上がり、彼女の芝居に付き合った。

「久しぶり」

天樹夢子の手を握る際、陸川北斗は少なからぬ力を込めた。後で戻ったら、どうして金碧輝煌なんかに来たのか、しっかり説明しろよ、とでも言うように。

柊木嶋は望月睦と陸川北斗が二人して天樹夢子に合わせて芝居を打っているのを見て、自分もそばで愛想笑いを浮かべるしかなかった。そして、陸川北斗の隣の席を空ける。

「天樹さん、こちらへどうぞ」

隣から天樹夢子を呼ぶ声がした。彼女は...

ログインして続きを読む