第167章 私は彼を信じている

天樹夢子が口を開く前に、陸川景陽がまた説得を始めた。

「夢子、恋愛なんてものはな、長い苦しみより短い痛みって言うだろ。今別れれば、せいぜい半月もすれば立ち直れる。別れなきゃ、ずっと苦しむことになるぞ」

「俺たちだって別に条件が悪いわけじゃないのに、何でわざわざこんな気苦労を背負い込む必要があるんだよ!」

陸川景陽のそそのかしに、そばにいた江川さんの顔はみるみるうちに曇り、水が滴るほど真っ黒になった。使用人がお茶とお菓子を運んでくると、江川さんは不機嫌な顔でそれを受け取った。

その後、リビングに来ると、陸川景陽の前にドンとそれを置き、不満げに言った。

「景陽若様、うちの若様と貴方は実...

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