第17章 私が渡させた

去年、天樹夢子から電話があったことは、陸川北斗も覚えていた。その時は会議中で、後で夏目緑に折り返させると、彼女は用はないと言ったそうだ。

そのあと、彼は出張に出た。

陸川北斗の顔色が変わったのを見て、胸に溜め込んでいたことを言い終えた笹川諭は、天樹夢子の方を向いて言った。「夢子、じゃあゆっくり休んで。後でまた様子を見に来るから」

笹川諭が去ると、天樹夢子は陸川北斗がまだ不機嫌な顔で黙っているのを見て、いつもの落ち着きを取り戻した。「もう、そんな顔しないで。私みたいに手のかからない奥さんがいて、あなたは喜ぶべきよ」

そう言うと、彼女は陸川北斗に続けた。「でも、これからは諭ちゃ...

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