第34章
川崎玲子は一心不乱に傷の手当てに集中していた。
まず彼の傷口を拭き取り、それから綿棒とアルコールで優しく消毒していく。一つ一つの動作が丁寧で真剣で、始終、顔を上げて彼を見ることはなかった。
藤原夜は気づいた。彼女には何か特別な心地よさがある。最初は目を引き、見続けると心が落ち着く。他の女性とは違う感覚だった。
「よく薬を塗るのか?」彼は尋ねた。
川崎玲子は頷いた。
「うん、花子がやんちゃで、よく転んだり打ったりするから、包帯を巻くのには慣れてるの」
「花子って誰だ?」
あっ!
しまった、うっかり言ってしまった!
川崎玲子は慌てて笑顔を作り、心虚ながら話題を変えた。
「ある...
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