第4章
消毒液の匂いが、病院の救急外来の待合室に重く立ち込めていた。
ヨルは私の足元で静かに伏せ、その茶色い瞳は、通り過ぎる看護師や職員の一人一人を、軍人のような精密さで追っていた。
三浦煉は向かいの椅子に座り、神経質にがん医療専門誌のページをめくっては、時折顔を上げて私の様子をうかがっていた。
彼の同僚への口利きで優先的に予約を入れてもらえたものの、それでも一時間ほどの待ち時間があった。
「藤田先生はここの腫瘍専門医の中でも一番腕がいい」
三浦煉は努めて平静な声で言った。
「もし本当に何か問題があるなら、先生が必ず見つけてくれる」
私はかすかに笑った。
「あなたはまだ、...
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