第6章
それは、午後に三浦煉が私の書類箱を整理していた時のことだった。
午前の精神的な疲労がどっと押し寄せ、ソファでうとうとしていた私は、彼が鋭く息を呑む音で目を覚ました。封のされた一通の封筒が彼の手から滑り落ち、中身が硬い木目の床に散らばったのだ。
死亡診断書。二通。
彼がその日付を読み、顔から血の気が引いていくのがわかった。
震える手で公的な書類を拾い上げる。心が目の前の光景を拒絶する一方で、医師としての訓練が自動的にその情報を処理していく。
「二〇二一年、十月十五日……これは……」
「ええ、あなたが浅此市へ向かった日よ」
私は心臓が早鐘を打つのを感じながらも、穏やかで...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章


縮小

拡大