第5章

 翌朝、私が卵を焼いていると、隼人の電話が鳴った。

 「森川です」まだ眠気の残る、しゃがれた声だった。

 眠そうだった彼の表情が、困惑に、そして怒りに変わっていくのを、私は見ていた。

 「クレームだと?」隼人の声は低く、険しくなった。「俺の仕事は全部記録に残してある。どの車のことだ?」

 私の手は震え始めた。

 「ああ、分かった」隼人は電話を切ると、ただそこに座っていた。

 聞きたくなかったけれど、私にはもう分かっていた。亮介だ。昨日の些細な脅しが、もう現実になっている。

 「クビになった」隼人はやがて、落ち着き払いすぎた声で言った。「客から、俺が車をめちゃくちゃにしたってクレ...

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