第3章

三村グループ分社の、床から天井まで広がる大きなガラス窓の前に立ち、眼下で風に揺れる椰子の木を眺めていた。

異動の手続きは想像以上に早く、一ヶ月ですべてのプロセスが完了した。新しい部下たちは礼儀正しく、時折「ご主人は?」と尋ねてくることがあったが、そのたびに私が「別れたわ」と答えると、相手はすぐに「察しました」という顔をして、二度とその話題に触れなくなる。

スマホが震えた。エージェンシーから送られてきた資料だ。

フォルダを開くと、写真の男は横顔のラインが美しく、鎖骨が見え隠れしている。新進気鋭の男性モデルで、国際的なファッションウィークで新人賞を取ったばかりだという。

『明日の夜はいかがですか?』

私はマネージャーに『プライベートなディナーをセッティングして。費用はいつものように請求を』と返信し、書類の決裁を続けた。

これで今週三人目だ。

正直に言おう。金を使うというのは、本当に気分がいい。

この男たちは、皆とても時間を守る。

月曜の相手はバレエ団のプリンシパルで、リンカーン・センターで『白鳥の湖』を踊った経験があり、芸術品のようにしなやかな肢体をしていた。水曜の相手はヴァイオリニスト。ウィーンの音楽院を卒業したばかりで、演奏中の横顔はこの上なく魅惑的だった。

彼らは皆、育ちが良く、ドアを開けてエスコートし、優雅で甘い言葉を囁き、別れ際には必ず「三村さん、またお会いできるのを楽しみにしています」と言う。

私は毎回「気分次第ね」と答え、秘書にエージェンシーへの送金を指示し、連絡先を削除する。

彼らが不満なわけではない。ただ……見飽きたら取り換える。単純で、手っ取り早い。

実のところ、こういう生活は私に合っている。

恋愛ごっこをする必要もなければ、誰かの帰りを待つ必要もない。知らない香水の匂いに気づいても、気にしていないフリをする必要さえないのだ。会いたい時に誰かに会い、変えたい時に変える。金で買った完璧さは、愛情なんかよりもずっと確実だ。

このトップクラスのアーティスト、モデル、音楽家たち——彼らは資金援助を必要とし、私は同伴者を必要としている。需要と供給が一致した、後腐れのない関係。

恋愛ごっこをする必要もなければ、誰かの帰りを待つ必要もない。知らない香水の匂いに気づいても、気にしていないフリをする必要さえないのだ。会いたい時に誰かに会い、消したい時に消す。金で買った忠誠は、愛情なんかよりもずっと確実だ。

翌日の夜八時、私は約束のレストランに到着した。

入り口に立っていた男は、白いシャツを着て、袖口を手首まで捲り上げている。彫りの深い目鼻立ちだ。

私は歩み寄った。

「こんばんは、三村です」

「宮下です」

彼は手を差し出した。

「お会いできて光栄です」

私たちは多くのことを語り合った——仕事から趣味、旅行から美食まで。この新人モデルは博識で、話し方も優雅で、まったく普通の人間とは思えなかった。

食後、私たちは近くの居酒屋へ移動し、ビールに変えて話を続けた。

いつの間にか随分と飲んでしまい、頭が少しふわふわとしている。

「宮下」

私は突然、彼に顔を近づけた。

「あのね、貴方ってすごく面白いわ」

「そうですか?」

彼は笑って背もたれに寄りかかった。

「どこが?」

「私の想像と全然違うの」

私は頬杖をついた。

「モデルをやるような人には見えないわ」

彼の表情が微妙に変化したが、何も言わなかった。

「知ってるでしょ、貴方たちの業界ってすごく乱れてるじゃない」

私は手をひらひらと振った。

「男も女も、手当たり次第にくっついたり離れたり」

彼は私に水を注いでくれた。

「三村さん、酔ってますね。まず水を飲んでください」

「酔ってないわ!」

そう言い張って、私は突然彼の手を掴んだ。

「宮下、提案があるの」

「提案とは?」

「私が貴方を養ってあげる!」

私は真剣な眼差しで彼を見た。

「貴方こそ、私が探していたタイプだと思うの」

宮下の表情が一瞬にして鮮やかに変わり、必死に笑いを堪えているようだった。

「養う……ですか?」

「そうよ!」

私はますます興奮して言った。

「私にはお金がある。貴方は……お金、必要でしょ? 私がたくさん、たーくさんあげるから、貴方は私一人の専属になりなさい!」

「三村さん……」

「最後まで聞いて!」

私は手を振って彼を遮り、指を折りながら数え上げた。

「第一に、毎月二百万を渡すわ。各種ボーナス込みでね。第二に、他の女と付き合わないこと。私にだけ誠実でいるの。第三に、呼び出したらすぐに来ること。私が寂しい時は一緒にいてちょうだい。第四に、甘い言葉を言えるようになること。愛されてるって実感させて……」

喋れば喋るほど感情が高ぶり、宮下の表情が驚きから苦笑交じりのものに変わっていくのに気づきもしなかった。

「それから、それからね」

私は続けた。

「定期的に健康診断を受けること。体型を維持して、私の好きな服を着て……」

宮下は静かに聞いていた。その瞳には、何か複雑な光が宿っている。彼は私の言葉を遮らず、ただ時折頷き、私が並べ立てる条件の一つ一つを真剣に検討しているようだった。

「どう?」

私は彼の腕を揺さぶった。

「受ける?」

彼は少しの間沈黙し、やがてゆっくりと口を開いた。

「本当に僕を養うつもりですか?」

「もちろん!」

私は自分の胸を叩いて保証した。

「私、お金持ちなのよ。本当なんだから!」

「それなら……」

彼はグラスを持ち上げ、口元に玩ぶような笑みを浮かべた。

「商談成立ですね」

「本当に?」

私は信じられなかった。

宮下はグラスを掲げた。

「では、こんばんは。僕のスポンサー様」

[同時刻/東京]

高木覚は、ガランとしたマンションに立ち尽くし、ローテーブルの上に置かれた離婚届を見つめていた。

クローゼットは半分空になり、化粧台の上からは何もかもが消え失せ、彼女がいつも履いていたあのスリッパさえ見当たらない。四十七回電話をかけたが、すべて「おかけになった電話は電源が入っていないか……」というアナウンスだった。

さらに恐ろしいことに、仕事のリソースが断たれ始めていた。

決まっていたはずのバラエティ番組は、制作サイドから突然「スケジュールの変更」を告げられた。

三本の広告契約も、ブランド側から突然「再検討したい」と言い渡された。

所属事務所の態度さえ変わった。マネージャーの口調からは、かつてのような熱意が消えていた。

彼は麻由の母親に電話をかけた。

「お義母さん、麻由はそちらに戻っていますか?」

「あの子から聞いていないの? 南の方へ転勤になったのよ。一ヶ月も前に発ったわ」

電話の向こうで、五秒間の沈黙が流れた。

「彼女が……転勤?」

彼の声が微かに震えた。

「ええ、昇進よ。三村グループ南方支社の専務取締役だって」

通話を切った後、彼はソファに崩れ落ちた。

専務取締役。

彼は突然、すべてを悟った。

携帯電話を掴み、マネージャーに電話をかける。

「麻由が今どこにいるか調べてくれ」

『高木さん、今心配すべきは、明日の仕事がキャンセルされたことですよ……』

「何だと?」

『スポンサーが撤退しました。資金繰りの問題だとかで……』

高木覚の手が震え始めた。

彼はLINEを開き、麻由とのトーク履歴を遡った。最後のメッセージは三ヶ月前、彼女からの『今夜は帰る?』という問いかけに対し、彼は『付き合いがある』と返していた。

さらに前へ遡ると、彼女が送ってきた『体調に気をつけて』『道中気をつけて』『新しいバラエティの仕事を取り付けておいたわ』といったメッセージばかりが並んでいる。

彼は一度も返信していなかった。

スマホが震え、桜井三晴からのメッセージが表示された。

『高木、私たちのこと、田代社長にバレたみたい。社長、すごく怒ってる』

彼はそのメッセージを見つめ、初めて恐怖を感じた。

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