第6章

俺の腕が、越沼玲の華奢な肩を強く抱き寄せた。彼女の全身は、追い詰められた小動物のように小刻みに震えている。

廊下の照明は依然として心許なく、いくつかの非常灯が弱々しい緑の光を投げかけるだけだ。その光が、壁に映る俺たちのシルエットに、どこか背徳的な輪郭を与えていた。

「……もう、行ったかしら」

玲の声は囁くようにか細いが、隠しきれない緊張に強張っている。彼女の吐息が俺の首筋にかかり、熱く、そしてせわしない。

「大丈夫だ。俺が守る」

俺は低い声で応えた。腕の中の彼女の身体は驚くほど柔らかく、熱を帯びていて、俺の心臓を狂ったように速く打たせた。

まさに、俺たちが密着していた、...

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