第110章 誘拐された子供

北村萌花は淡々とした口調で応じた。

「顔色は悪くないみたいね。朝食の準備をしてくるから、さっさと来て」

 そう言い捨てると、彼女は余裕の足取りで部屋を出ていった。

 残された佐藤健志は、信じられないといった表情でスマホを取り出し、自分のやつれきった顔を画面に映した。わざわざこの顔を見せるために彼女の前に出たというのに、まさか目の下のクマに気づかなかったのか?

 昨夜、彼女のことで眠れぬ夜を過ごしたというのに、当の本人は風のように涼しい顔をしている。彼女の心の中に、自分という存在はこれっぽっちもいないらしい。

 食卓に着いても、北村萌花は子供たちの世話にかかりきりで、佐藤健志のことな...

ログインして続きを読む