第116章 北村先生、騙されましたね

北村萌花は彼の言い訳など聞きたくなかったが、患者や家族の手前、不安を煽るわけにはいかない。彼女は黙って頷いた。

 午後二時、手術室。

 麻酔を終えた患者を見下ろしながら、北村萌花は不可解そうに問いかけた。

「森村さん、そんなに名声が必要なの?」

 森村奏良は拳を握りしめ、歯噛みして答える。

「俺の家が医学の名門だってことは知ってるだろ。従兄が医学賞を取ったとかで、爺さんたちが浮かれちまってな。この病院の経営をあいつに任せるって言い出したんだ」

「実力があるなら、任せればいいじゃない」

「ふざけるな。この病院は俺たち一家の心血を注いだ場所だ。本来なら俺が継ぐはずだったのに、俺の同...

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