第29章 パパになる素質

もし昔の仲間たちが今の自分の境遇を見たら、一生笑いものにされるだろうと、佐藤健志は想像もできなかった。

堂々たる佐藤家の権力者であり、帝都で権勢を振るっていた自分が、一人の女にここまで抑えつけられるとは。

幸いにも北村萌花は朝食を終えるとすぐに出かけていった。でなければ、佐藤健志はもっと肩身の狭い思いをしていたことだろう。

帝都病院。北村萌花が車を降りると、鈴木院長が親しげに出迎えた。

「北村先生、お手伝いに来ていただき感謝します」

「どういたしまして。でも、私の身元については、どうか他言しないでいただきたいのですが」

北村萌花は名医として知られ、多くの病院が協力を求める...

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