第97章 その権利を与える

斉藤の妻の、あの野太くしゃがれた声。それを聞いた瞬間、斉藤悠斗は戦慄した。脳裏に浮かぶのは、怒り狂う彼女の巨躯だ。あの拳一発で、自分などぺしゃんこにされるに違いない。

「おい、誤解だ! あれは客のために用意したもので、俺は絶対に裏切ったりしてない!」

『全部丸見えなんだよ! そこで待ってろ、今すぐボコボコにしてやるからな!』

 通話が切れる。斉藤悠斗の背中はすでに冷や汗でぐっしょりと濡れていた。

 彼は大慌てで服を着込み、ベッドに横たわる松島彩乃に向かって怒鳴り散らした。

「いつまで寝てるんだ、早くしろ! 妻が来るんだぞ、殺される!」

 松島彩乃は悠然と長い髪を弄び、まったく意に...

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