第46章

青木圭は江口辰の心中を知らず、先ほど「女の子」が一生懸命顔を伸ばしていた様子を思い出し、瞳が揺らめいた。「見えないなら、言ってくれればいいのに」

冷たい表情をしていた小さな顔が赤くなり始め、辰ちゃんは今回は抵抗せず、急いで振り返って大好きなパンダを見た。

人に見えないところで、辰ちゃんの口角は抑えきれずに上がっていた。

パンダを見終わり、青木圭が江口辰を下ろした直後、背後から見知らぬ女性の焦った声が聞こえてきた。「走り回らないで、ママと一緒に歩きなさい!」

青木圭は思わず眉をひそめ、振り返ると、ちょうど小さな女の子が人混みの中を走り回っているのが見えた。女の子は母親の叫び声を聞いて笑...

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