第16章

「さより」水原音子は横に座り、彼女を見上げた。

「もし、ウィラーと私の間で選ばなければならないとしたら、あなたは……」

「私はあなたを選ぶわ!」

武田さよりは迷うことなく、言葉を最後まで聞かずに遮った。

水原音子は一瞬驚き、そして微笑んだ。

実際、さよりはここで結構うまくやっていた。仕事は安定していて、待遇もまずまずだった。彼女は気が強く、複雑な人間関係を好まなかったが、専門知識が確かだったので、このスタジオは彼女に合っていた。

自分はウィラーにはもう戻るつもりはなかったが、無意識のうちにさよりを巻き込んでしまうことになり、心の中では申し訳なく思っていた。

ただ、さよりがこれほ...

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