第21章

先に自分の方へマイクを向けて、高橋遥斗が先手を打った。

「もちろん窃盗とは言えません。何といっても、水原音子は我が社の社員であり、長年にわたって江口さんのアシスタントを務めてきました。多かれ少なかれ関わってきたのは事実です。今回の件を窃盗や盗作といった不快な言葉で定義したくはありません。ただ、この業界には誘惑が多すぎるのです。一時的に誘惑に負けてしまったことは理解できますし、我々は水原音子にチャンスを与えたいと思っています。そして、ウィラーが今後もより多くの素晴らしい作品を皆様にお届けできることを願っています」

さすがに高橋遥斗は、この数年間で社交やメディア対応においてかなりの経験を積ん...

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