第23章

高橋遥斗はまるで自分の耳を疑った。「何だって？」

「チャンスを与えなかったわけじゃない。でも今になっても、私に責任を押し付けたいの。私はそんなに馬鹿に見えるの？」

唇の端に皮肉な笑みを浮かべながら、水原音子の声は氷のように冷たかった。

高橋遥斗の心に寒気が走った。

彼は突然、目の前の女性があまりにも見知らぬ人のように感じた。数年来知っていた、あの馴染みのある彼女ではなかった。彼女はあまりにも鋭く、あまりにも捉えどころがなく、あまりにもコントロールしがたい存在になっていた。

「水原音子、どういう意味だ？俺を信じてないのか？」

「信じすぎたのよ。自分がどうやって売られたのかも分からな...