第50章

「結局、あなたはまだ拗ねているのね」夏目翔太は頭を振った。「確かに当時、おじいさんは厳しいことを言ったけど、あれは怒っていたからだよ。家族なんだから、怒りに任せた言葉を真に受けるものじゃないだろう?」

「もうこんなに時間が経ったんだ。苦労も十分したはずだろう。今、外でどう言われているか見てみろよ。訴訟まで抱えて、自分をこんな状態に追い込んでまで、まだ戻ろうとしないのか?」

「戻りたくないわけじゃないの。私が戻れると思ったら、自然と戻るわ」水原音子は背筋を伸ばした。「私のことは私自身で解決するから、安心して。誰も私と夏目家の関係を知ることはないわ」

しかし、その言葉は夏目翔太の怒りを煽っ...

ログインして続きを読む