第7章

 私が死んで一ヶ月が過ぎた頃、北川修は幻覚を見るようになった。

 虚空に向かって私の名を呼ぶ声が、いつも聞こえてくる。

 彼は時折、ドレッサーの前に立ち、何もない空間に向かって髪を梳く仕草をしては、私の名を呟く。

 次第に、彼の視線や言葉の端々から、彼に見えている「私」がどこにいるのか、正確に分かるようになってきた。

 私は彼の背後に立ち、食卓の向かいに座り、ベッドで横になる……私は、至る所に存在していた。

 残念なことに、彼には本物の私の姿が見えていない。

 北川夫人は時折、ドアの外に立ち、複雑な面持ちで彼を見つめている。

 私の父が一度だけ訪ねてきた。父は一本のUSBメモリ...

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