第10章

 翌朝、部屋に入ってきた日村の顔には、悪い知らせがありありと浮かんでいた。

「ボス、逃げられました」

 正仁は弾かれたように顔を上げた。

「なんだと?」

「さくらさんです。夜のうちに何者かが拘置室に侵入しました。佐藤家の手引きです」

「佐藤家だと?」

 正仁は腹部の激痛に耐えながら、無理やり上体を起こした。

「なぜ奴らが――」

「どうやら彼女は佐藤亮の隠し子だったようです。彼らは何年も彼女を監視し、好機をうかがっていた」

 日村は彼にファイルを渡した。

「機密文書を持ち出されました。一族の記録、取引先のリスト、ありとあらゆるものを」

 正仁はファイルを部屋の隅に投げ捨て...

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