第5章

早矢香視点

 私はふらつく足取りで通りに出た。タクシーが近づいてくるのが見え、必死に手を挙げて合図を送る。

 車が止まった。私はドアを乱暴に開け、助手席に倒れ込んだ。

 息を切らしながら行き先を告げ、急いでくれるよう頼む。

 運転手は頷き、車を発進させた。

 窓に頭をもたせかけ、呼吸を整えようと努める。お母さん、お願い、無事でいて。お願い。

 だが、時間が経つにつれ、何かがおかしいと感じ始めた。

 窓の外に見える建物に見覚えがある。病院へ向かう道ではない。

「すみません」

 私は言った。

「方向が違います。病院は――」

 運転手が振り返り、その顔にゆっくりと笑みが広がっ...

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