第5章
港区にある秋生の高級マンションは、息が詰まるほど静まり返っていた。
スマホの画面は十一月三十日、午後三時を表示している。
秋生は昨日、大阪の投資フォーラムから戻っているはずだが、未だに帰宅していない。
LINEのタイムラインに、昨夜のハイアットリージェンシーの写真が流れてきた——ロビーに佇む秋生と心夢の姿。心夢は秋生の腕に手を回し、勝者の笑みを浮かべている。
添えられたメッセージは、『愛と仕事、どちらが大切かしら?』
投稿者:柏神心夢。
私はその写真を、一晩中見つめ続けていた。
再度秋生に電話をかけようとした矢先、インターホンが鳴った。
私は玄関へ駆け寄り、すがるような思いで...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
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