第15章

翌日、船が岸に着くと、佐藤甘の運転手がGクラスで桟橋で待っていた。

高橋司が離れて車に乗る時、そのGクラスが彼の視界の端に映った。

あれは......前回、会社で葉山萌香を迎えに来た車だ。

高橋司は運転席を一瞥した。

痩せた中年男性が、チックトックを見ていた。

田中秘書に促されて、高橋司はようやく視線を外し、冷ややかに車に乗り込んだ。

これからは葉山萌香のことは、もう自分とは無関係だ。

もう秋子への想いを、葉山萌香に投影することもない。

高橋司の車が桟橋を離れると、佐藤甘は葉山萌香にしがみついて、ゆっくりと歩いてきた。

運転手は状況を見て、すぐにスマホを切り、ドアを開け...