第54章

「……」

「ふふ」

そして会議室へと足を踏み入れた。

こういった遊び人たちは、口から出る言葉なんて所詮たわごとばかり。

たまに良いことを言っているように見えても、それも絶対に演技に過ぎない。

彼女は決して忘れていなかった。

高橋司に辞表を出したあの日、この若様は上機嫌で、嘲笑いながらもっと高い値段で彼女を買おうなどと妄想していたことを。

本社から人が来たと知っていたから。

工事部の人間はほとんどが現場にいた。

金田豪一の呼びかけで、人々はすぐに会議室に集まってきた。

平村四広が逮捕されたことで、誰も油断できなくなっていた。

「葉山さん、外で買い物している者以外は全員揃い...

ログインして続きを読む