第12章

以前、車の中で水原歩美が窓の外を見つめる姿を見た時、彼女の羨むような表情に、高橋司は思わず花を注文させてしまった。

今、花が届いて、彼は先ほどの衝動的な行動を後悔し、なぜか胸の内がざわついていた。

リビングルームで長い間座っていた後、ようやく花を手に取り階段を上った。

ドアの前に着くと、彼女が電話で話す声が聞こえてきた。

優しく甘い声色で、笑みを含んでいる。

「さっきは本当に申し訳ありませんでした。今度はコンサートにご招待しますね」

「明日ですか?大丈夫ですよ。その時間に合わせて調整しておきます」

「この前は本当にありがとうございました。あの晩知り合った方々の何人かが水原グルー...

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